アトピー性皮膚炎について

アトピーって何?

アレルギーは、抗原(アレルゲン)と呼ばれる原因物質が体内に入ることで起きます。
すべての人がアレルギーを起こすわけではなく、アレルギーを起こしやすい体質をアトピー体質と呼びます。何がきっかけなのか、現在のところはっきりわかっていません。

アレルギーによる病気は喘息、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどがあります。アトピー性皮膚炎の原因物質は、食物、ダニ、ほこり、カビ、花粉、ペット、化粧品などがあります。食物由来のアトピー性皮膚炎は乳幼児期に多く、年齢とともに減少する傾向があります。
日本では3大食品(卵、牛乳、大豆)、4大食品(3大食品+小麦)が食物アレルギーの原因であることが多いとされています。

アトピー性皮膚炎の治療

長期のスキンケアが必要です。腰を据えてしっかり治していきましょう。

ステロイド外用剤

アトピーの程度のひどいところに用います。5段階の強さ(最強、非常に強い、強い、弱い)があり、弱いもの(キンダベート、ロコイド、アルメタ等)を用いることが多いですが、初期に病変が強い場合は局所的に強いステロイドを使う場合もあります。良くなれば、これをさらに良質のワセリン(プロペト)でうすめたり、塗布の間隔をあけたり(プロアクティブ療法)して使用します。最終的にはステロイドの含まれていない軟膏でコントロールできれば理想的です。ステロイド軟膏の適切な使用は皮膚がきれいになるだけでなく、痒みを治め、良く眠れるようになるなど、患者様のQOL(Quality Of Life:生活の質)を向上させます。強いステロイドを長期に漠然と使用することは避けましょう。ステロイドに対する疑問や希望はご相談下さい。

非ステロイド外用剤

スキンケアの際の保湿に用います。ワセリン、プロペト、などの他にヘパリンを含む保湿剤も併用します。皮膚の角質を保護し、外界からのアレルゲンの侵入を防ぐことは非常に重要です。

抗ヒスタミン剤

かゆみに対して用いる。眠気などの副作用があるが、個人差が多い。

抗アレルギー剤

アレルギー反応を押さえ結果として痒みも押さえます。これのみでの治療は困難ですが、結果として掻く刺激が減り、塗布薬との併用により効果が上がります。

環境整備

ダニ、カビがアトピーの原因の一つであることがわかっている。

食事療法

食物アレルギーが明らかなときに食物除去療法を行いますが、正確な診断負荷テストが必要です。血液検査で陽性だからといって必ず除去が必要とは限りません。また、できれば乳児期後半には負荷テストを行い、皮膚はぬり薬で治療しながら微量でも原因食物の定期的な摂取を試みることが食物アレルギーの治癒も目指した治療と考えています。

スキンケアが大切!

アトピーの人は乾燥肌が多く、普通肌よりも防御能が低下しています。
皮膚をいつも清潔に保ち、水分を保つことがアトピー性皮膚炎の治療の大原則です。

  1. 毎晩入浴し、できれば朝にシャワーを浴びる。
  2. 温まるとかゆみが増すので、お湯は37~39℃のぬるめにする。温まってかゆみが増すときは冷やしてあげましょう。
  3. アトピーがひどくても、老廃物やばい菌を取り去るために洗うときには必ず石鹸を使いましょう。石鹸は一般的なものでOK。よく泡立て、優しくなでるように洗う。石鹸成分が残らないようによくすすいでください。
  4. 入浴直後の皮膚がしっとりしている間に、保湿成分の入った薬を塗る。
  5. かゆみのためにひっかき傷をつくると感染源にもなり、アトピーを悪化させます。ひっかき傷をできにくくするために爪を切り、ヤスリで削っておきましょう。手洗いをまめにすることも大切です。
  6. 毛髪は皮膚に付かないよう、短く切るか、きれいに束ねておきましょう。
  7. 外から帰ったら必ず手を洗う。運動などで汗をかいた後はすぐシャワーを浴びて汚れを流しておきましょう。
  8. チクチクする衣服は湿疹やかゆみを悪化させるので、肌着はすべて木綿にしましょう。ただし、木綿でも硬い生地のものは皮膚を傷付けてしまうことがあります。周りの人の衣服も注意してください。

イソジン療法

アトピーが悪化してじくじくしているときにはその部分に黄色ブドウ球菌というばい菌が住み着いて増えていることがあり、この菌が出す毒素がかゆみや赤み、アトピー悪化の原因となっていることがあります。この菌はとびひの原因になることもあり、アトピーの治りを遅らせます。
イソジンという消毒液を1日1回ほどアトピーのひどい部分に塗ることによってこの菌を殺し、毒素を減らしてじくじくを乾かし、アトピーの治りを早くすることができます。イソジンは皮膚に塗ってから5分ぐらいで菌は死んでいますので、入浴前にじくじくしたところや、ひっかき傷のできたところにイソジンを塗り、5分たったら入浴しイソジンの茶色い色とともに死んだ菌を洗い流してください。
イソジンは原液だとしみることもあるので目分量で結構ですから、水道水で約5倍に薄めてください。イソジンを小皿に少量移して薄めた後、薬局に売っている綿球や、化粧用のパフを箸でつかんで塗るか、毛先の柔らかいハケで塗ってください。

環境を整えよう

ほこり、ダニ、カビが増えない住宅環境をつくりましょう。

  • ほこりがたまるもの(絨毯、厚いカーテン、布張りソファ、ぬいぐるみ、壁掛け)は置かず、床は板の間がよい。
  • 換気をこまめに。
  • 寝室の家具や置物はできるだけ減らす。
  • 最低でも週に1度は掃除し、畳1畳あたり3分ほど念入りに掃除機をかける(1カ月でダニの数は10分の1になる)。掃除機は吸い取ったダニが出ないタイプを使用するか、本体を部屋の外に出して使う。
  • 羊毛・羽毛布団、ソバ殻の枕は避ける。家族全員の布団を化繊または綿にする。週に1~2回は天日で干すか乾燥機にかけ、布団用の掃除機の口で布団の両面を各3分ずつ吸い取る。
  • 屋内は禁煙。石油ストーブ、ガスストーブもなるべく避け、できれば屋外排気式のものを使用する。
  • 湿度は60%くらいに保つ。結露はすぐにふき取る。
  • アレルゲンのおそれのあるもの(ペットなど)は室内に入れない。

食物除去療法について

皮膚テストや血液検査で明らかに食物が原因物質だと推測される場合、また、経験的にその食べ物を食べたときに明らかに、アトピーが悪化する場合は食物除去療法をおこないます。必要があれば、食物除去テスト、食物負荷テストを行います。思わぬ食べ物にいろいろな食品が混ざっています。検査で陽性だったからと言って全てが除去対象となるわけではなく、除去の程度は各患者様によって異なりますので、主観的な判断で行うことなくお気軽にご相談ください。最近では過度の食物制限は避け、皮膚は塗り薬で治療しながら、原因の食物であっても、食べれる範囲内で少量から摂取するほうが、結果的として食物アレルギーは速く治ると言われるようになってきました。当院でもその方針で治療を勧めています。
また、途中で他の食べ物にアレルギーがでたり、食物以外で悪化することもありますので、除去食を行っていても皮膚の病状が悪化するようなときは、必ず受診してください。

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